前回、酸蝕症の原因に日常的に手に取りやすい飲み物がある話をしました。
本当に細菌がいなくても歯が溶けるのか簡単な実験をしてみます。コンビニエンスストアでいくつか飲み物を購入して、それぞれに抜去歯(本物の人間の歯)を入れ、1週間室温で放置しました。
今回、実験に用いた飲料水は以下のものになります。A:コーラ B:乳酸菌飲料 C:東京の水道水 D:レモン飲料 E:黒酢 F:ミルク砂糖入りコーヒー G:緑茶 H:スポーツドリンク I:レモンサワー J:ビール
どうでしょうか?特に著しく変化が認められたのは、A:コーラpH2.2、D:レモン飲料水pH2.4、H:スポーツドリンクpH3.5、I:レモンサワーpH3.8です。
次いでE:黒酢pH3.9、F:ビールpH4.0、B:乳酸菌飲料pH4.0となりました。
対してC:東京の水道水pH7.5(東京水道局調べ)とG:緑茶pH6.3は実験前後で変化がなかった。
一番脱灰が目立ったコーラをマイクロスコープで拡大し観察すると、カラメル色素による着色と歯面が粗造になっています。また、元々脱灰していた部分は脱灰が進行し、ところどころ穴が認められます。
以上より、細菌がなくても歯が溶け始めるエナメル質の臨界pH5.5以下の酸性が強い飲み物ほど①歯を脱灰させる、②虫歯がある部分はさらに脱灰が進み歯質の崩壊が起きることが確認されました。
【次回に続く】
参考文献
1. 北迫勇一,岩切勝彦著,『知る•診る•対応する 酸蝕症』,クインテッセンス出版株式会社, 第1版, 2017
2. 『飲食物で歯が溶ける?!酸蝕症にご用心』nico7月号, クインテッセンス出版株式会社,2014